解雇を言い渡された男性。仕事にやりがいを感じていただけに、納得がいかない
新型コロナウイルスのワクチンを接種していない人が、職場などで不当な扱いを受ける例が目立っている。体質に不安があって控えていても解雇されたり、打つことを無理強いされたりするケースも。3回目の接種が始まる中、国は引き続き「強制ではない」と周知するが、差別や偏見は地域や家庭にまで広がっているようだ。
福岡市内の会社に勤める30代男性は昨年末、解雇を告げられた。測量機器の納入や運転の点検をする仕事。顧客の事務所や機器を取り付けた現場に出向くことが多く、「ワクチンを打ってないと行けないですよね」と社長に言われた。 幼い頃から体が弱かった。インフルエンザの予防接種では発熱や吐き気の症状が出た。コロナワクチンを打った同僚には体調を崩した人も多く、不安になって打つのを控えている。
ワクチンについて最初に問われたのは昨年夏。行動を共にしていた上司から「打つの?」と何度か聞かれた。体質を説明し、理解されたと思っていた。 ところが間もなく、未接種を理由に「もう現場に連れて行かない」と言われた。取引先からも来ないよう求められたという。「打たないと決めたんだから自分の責任」と突き放された。 攻撃は続く。「他の社員は副反応を知っていても受けた」「打たないのは宗教上の理由か?」。同僚が10人近くいる前で追及された。仕事の担当を外され、社内清掃が中心に。そして解雇を言い渡された。 仕事にやりがいを感じているのに「こんなので辞めさせられるなんて」。解雇撤回を会社に求めている。
厚生労働省は、薬や食べ物により呼吸困難などに陥るアナフィラキシー症状がある人は打つのを控え、過去の予防接種で2日以内に発熱や発疹が出た人も接種に注意が必要とする。事業主に対し、未接種を理由にした解雇や退職勧奨、いじめといった差別的な行為をしないよう求め、強引な配置転換もハラスメントに当たる可能性があるとしている。 それでも当事者は悲鳴を上げる。昨年10月、日本弁護士連合会(東京)が同5月に続いて実施したワクチンに関する「人権・差別問題ホットライン」には93件の相談があった。
ある看護師は「『接種しないなら医療法人の方針で退職してもらう』と言われ、辞めた」。同様の理由で退職した看護師が他にもいると語ったという。障害者施設の従業員は「未接種の従業員の出社禁止、配置転換が検討されている。妥当なのか」と疑問を寄せた。
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