オミクロン株 軽症でも「持病悪化」で救急搬送のケースも

オミクロン株 軽症でも「持病悪化」で救急搬送のケースも

急拡大するオミクロン株。首都圏の大学病院では、ほとんどの患者が軽症でとどまっていますが、なかにはコロナの症状は軽いものの感染によって持病が悪化し救急搬送されるなど、感染が間接的に影響を及ぼしているとみられるケースも相次いでいます。

埼玉県川越市にある、埼玉医科大学総合医療センターは、これまで新型コロナの主に重症患者の治療にあたってきました。

オミクロン株が急拡大している第6波では、これまでに重症患者への対応はなく、22日時点で合わせて40床余りが設けられたコロナ患者の病棟には、高齢者や基礎疾患のある7人が入院していますが、いずれも症状は軽いということです。

ところが、治療にあたる医師は、コロナの症状とは別にある問題が起きていると指摘します。

入院中の埼玉県内に住む50代の女性は、感染が確認された数日間は自宅で療養していましたが、療養している間に腹部の持病が悪化し、救急搬送されてきました。

医師は、この女性のようにコロナの症状は軽いものの、感染が間接的に影響を及ぼし、持病が悪化したとみられるケースも相次いでいるということです。

女性には肺炎などはみられず、持病の状態も改善してきたため、医師が代理で話を聞く形で取材に応じてくれました。

女性は「熱が39度に上がったあと、翌日には熱は下がって、このまま治っていくのかと思っていたが、意外とそうではなく、感染によって体にダメージを受けていたようです」と話していました。

感染症科の岡秀昭教授は「コロナは軽症で肺炎にならなくても、高熱やウイルスによるダメージがあると、持病が悪化することがある。腎臓が悪い人が腎臓が悪化したり、糖尿病の人は糖尿病が悪くなったり。オミクロン株で圧倒的に感染者数が増えると、それによって持病が悪化する、あるいはほかの病気が発症するというリスクにもなってくる」と指摘しています。

オミクロン株「油断しないで」

新型コロナウイルスに感染し、埼玉医科大学総合医療センターに入院している女性が取材に応じ、「“オミクロン株はただのかぜだ”と思う人もいるかもしれないが、持病の悪化など体へのダメージも大きいので、油断しないでほしい」と訴えていました。

埼玉県内に住む50代の女性は、新型コロナウイルスに感染し、現在も入院していますが、症状が落ち着いてきたため、医師が病棟内で代理で話を聞く形で取材に応じてくれました。

女性は1月上旬、発熱やのどの痛みを感じ、近くの医療機関で検査を受けたところ、新型コロナへの感染が確認されました。

感染した際の状況について、女性は「飲食店で知人と集まって会話していたので、そこで感染したと思います。お店で換気もしていたし、それぞれマスクも着用していましたが、お酒を飲んだときに気が緩み、マスクをつけて話す、というのが緩くなってしまったと思います」と振り返りました。

当初、女性は自宅で療養していましたが、数日後、腹部の持病の状態が悪化し、救急搬送されました。

女性は「はじめに熱が39度くらいまで上がって翌日に医療機関で陽性が確認されたのですが、そのときは熱は下がっていたので、このままどんどん楽に治っていくのではないかと思っていました。しかし、意外とそうではなく、感染によって体はダメージを受けていたようです」と話していました。

そして、病院で検査したところ、オミクロン株への感染の疑いがあることが分かりました。

一方、家族への影響も大きく、夫は職場に行けず自宅待機となり、息子は大学受験でしたが、陰性の結果を受けて別室で受験する形になったということです。

女性は「今まで感染していなかったし、ワクチンを2回接種していることもあり、気が緩んでいたと思います。いつどこで感染するのか分からず、体へのダメージも大きいので、“オミクロン株はただのかぜだ”という意見も見かけますが、やっぱり油断しないほうがいいと思います。これまで我慢してきて、人に会いたいという気持ちはあると思いますが、今はもう一息、我慢したほうがいいとつくづく思います」と話していました。

感染で本来の治療受けられず

急速に広がるオミクロン株。

コロナの症状は軽症のケースが多いものの、その感染力の高さから本来受けたい治療が受けられないという、思わぬ影響も出ています。

埼玉医科大学総合医療センターには、先週、「外科の手術をしようとしたところ、コロナの感染が判明したので手術ができない。コロナ病棟があるそちらで患者を引き受けて手術してもらえないか」といった相談が、埼玉県や東京都から相次いで寄せられたということです。

感染症科の岡秀昭教授によりますと、具体的なケースとしては次のようなものでした。

患者が、別の病院で腸の病気の緊急手術を受けるため、新型コロナの検査を行ったところ、感染が判明したということです。

コロナの症状はほとんどありませんでしたが、この病院ではコロナの感染対策を行ったうえで手術を行う準備ができないなどとして、岡教授の病院で対応できないか依頼があったということです。

岡教授は「コロナ自体はすでに“コモンディジーズ”(commondisease)よくある病気。これだけ感染者が増えると、いちばんありふれた病気になっている。盲腸で来たけれども実はコロナがあった、そういうことは十分あり得る。軽いコロナはインフルエンザ症状なので、どの病院でも診ることができるようにしないといけないと思うし、急いで手術をしなければ患者の命に関わることもある。感染対策を取りながらどの病院でも診れるようにしなければいけない」と指摘しています。