孫正義
創業40年。孫正義のソフトバンクは自ら「ロールモデル」と称する300年企業「ロスチャイルド(ユダヤ系金融財閥)」の隊列に上ることができるだろうか。 【写真】文在寅大統領に会った孫正義氏
ソフトバンクは現在孫会長の表現によると「冬の大嵐の真っただ中」にある。孫会長率いる世界最大の技術投資ファンドであるビジョンファンドが投資した滴滴出行やアリババなど中国IT企業の株価が急落、投資損失が雪だるま式に増えた。
2019年度の大損失(ウィーワーク上場失敗、ウーバー業績悪化)、2020年度の記録的黒字(クーパン、ドアダッシュ上場による大幅純利益)に続き2021年度の業績もまたジェットコースターのように転ぶ見通しだ。 だが孫会長は1日付日経ビジネスとの新年インタビューで、「15カ年計画を立てて毎週見直している」として短期損失は意に介さないという自信を見せた。自身は「いかに安く買って高く売るかが唯一の正義でありゴールである投資家でなく、お金ではなくて未来をつくる資本家になりたい」とした。
「お金をつくることが主な目的なら、それに適した組織や人材、ビジョンがあるかと思います。為替や金利、雇用統計、誰が政権を取るかなどを、毎日気にしなければいけない。僕はそういうことを気にしたことはあまりない。むしろ今、AIでどんな技術やビジネスモデルが出てきているかに関心があります。AIで金融の流れがどう変わるかといった未来に興味がある」と説明した。 その上で孫会長は自身のロールモデルとしてロスチャイルドを挙げた。
彼は「ジェームズ・ワットやトーマス・エジソン、ヘンリー・フォードなどの発明家、起業家が産業革命をけん引しましたが、彼らとビジョンを共有しリスクを取ったロスチャイルドのような資本家がいた。そうして両輪で未来をつくりにいった結果、人類に有益な結果を生み出したんだろうと思うんです。
AI革命の担い手である起業家、発明家とビジョンを共有して、人類の未来をつくりたい」 孫会長は「我々(ソフトバンク)が投資している会社で利益が出ているのは3~5%しかない。日本的常識で言えばいかがわしい会社だらけ。我々は若者や起業家に『いかがわしくあれ』と言っているぐらいなんです。
世の中が『立派な会社だ、安心な会社だ』と思うころには、成長しない成熟した会社になってしまう」と主張した。 孫会長は「決算発表で『冬の大嵐の真っただ中』と表現したように、毎日が春では決してない。常に挑戦し続けて、少しはらはらどきどきするくらいがドラマがあって楽しいと思う」と付け加えた。
中国市場に対しては慎重な見通しを出した。孫会長は「中長期で見れば中国と米国がAIの2大勢力だと思うんですね。ただ、(中国政府の)新たな規制の波がどの範囲、内容になるのかはよく分からない部分があり、慎重に検討しなきゃならない」と予測した。その上で「世界中でAIのユニコーン軍団が、ちょうどインターネットの揺籃期のような形で毎日生まれていますから、そういうところに資金を優先的に回していくということが今起きています」と説明した。
「変わらない」日本の現住所に対しては苦言をはばからなかった。孫会長は「日本の有識者といわれる人たちは、すぐ『AIは人間の敵か』みたいな話をしたがる。話がずれすぎていて議論する気にもならない。大人たちが自分たちの価値観で、新しい時代を知りもしないで批判する。これが日本の一番の問題だろう」と指摘した。日本の大人たちが10年前にGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック(現メタ)、アマゾン)を「いかがわしい連中」としたが、いまそのGAFAが世界経済の中心となっている意味を悟らなければならないという主張だ。
孫会長は昨年「60代で引退」という発言を撤回したことと関連、「半分クレージーな連中と、クレージーな話を、一緒に夢見ているんですけど、実に痛快だし、もう寝ている暇がない。興奮の連続。当分はリタイアするつもりがないですね」と話した。
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