新型コロナウイルスの感染急拡大で、自治体による無料のPCR検査や抗原検査を希望する人が殺到している。感染を不安に思う無症状の人が対象だが、感染者や検査希望者の急増により、結果判明まで時間がかかったり、検査キットが不足したりする事態も起きている。検査数は右肩上がりで増え続けており、検査体制の拡充が急務だ。
「不安解消に」
24日、大阪・キタのPCR検査場前には、検査を待つ人の行列ができていた。「少し待つかなとは思ったが、これほど並んでいたとは。テーマパークのアトラクション以来だ」と話すのは、大阪市西淀川区のパーソナルトレーナー、屋宜(やぎ)広紀さん(29)。知人が濃厚接触者と判明したことで不安に思い、検査に訪れたという。前日も検査場に来たが、夕方には受け付けが終了。この日は1時間半待って、ようやく検査を受けることができ、安堵(あんど)した様子だった。
行列には、障害児のデイサービス施設を経営する大阪市城東区の男性(45)の姿も。「感染が増えているので、(施設を利用する)子供や保護者の不安の解消になれば」と話し、他の職員にも検査を受けるよう求めているという。
検査キット不足
新変異株「オミクロン株」の拡大を受け、民間機関や薬局でPCR検査などが無料で受けられる自治体は増えている。
昨年12月下旬から無料検査を始めた大阪府では、今月10日からの1週間の検査数が、前週の倍となる4万件超に達した。検査需要の急拡大への対応は喫緊の課題になっており、府の担当者は「事業者から検査キットが不足しているとの声があり、国に要望している」と明かした。
19日夕に無料のPCR検査を受けた女性会社員(44)のケースでは、結果は当初、21日午前3時過ぎから専用サイトで閲覧できるとされた。しかし、実際に確認できたのは丸1日遅れの22日午前3時半過ぎ。サイトをよく見ると「無料検査が大変多く、検査結果が遅れている」との注意書きがあった。
幸い陰性だったが、結果判明まで2人の子供が学校に登校できないなどの影響があった。女性は「検査に時間がかかるのは仕方ないが、結果がなかなか出ないと、不安が高じて仕方なかった」と話した。
迫る限界
感染拡大「第6波」では、各地で検査の希望者が相次いでいる。PCR検査の場合、政府は1日で最大約38万件に対応できるとしているが、19日の全国の検査人数は計20万件を超えた。社会経済活動の維持に向け、政府は検査体制の拡充を掲げるが、能力の限界は迫りつつあるといえる。
政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志も当初、重症化リスクが比較的低い若年層について、「検査を実施せず臨床症状のみで診断を行うことを検討する必要がある」との提言案を示し、波紋を呼んだ。
PCR検査場に並んでいた大阪市北区の理学療法士、三浦亜梨沙さん(23)は「症状が出たら、(若年層も)すぐに対応できるような体制だけは整えてほしい」と訴えた。
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